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自慢のスイーツも販売するカフェの経営

都道府県福井県 年代40代 業種飲食・料理
 株式会社さりゅ
[ 代表取締役 ]
高木 美代子 さん

高木美代子さんは得意な料理と器好きを生かして、娘ふたりとともにカフェを開業。おいしくバランスの良いランチは大人気で、製造・開発したスイーツは地元福井県のホテルなどで、ギフト商品としても選ばれています。

起業したとき

仕事の経験
結婚
子ども
生かした していなかった いた

プロフィール

東京でテレビのメイクアップアーティストとして活動した後、地元福井に戻り、結婚。21年間、専業主婦に専念。事業を経営する夫のもとを訪れるゲストが多く、そのもてなしで料理の腕を磨く。1995年、離婚。得意な料理を生かして事業をしたいと考え、ふたりの娘とともに2000年4月にカフェ「salut(さりゅ)」を開業。2006年8月、スイーツの卸販売などを開始したことで、株式会社さりゅとして法人化した。

起業年表

年齢 西暦 主な活動
19歳
1971年
テレビのメイクアップアーティストとして活動を開始 
21歳 1973年 地元福井県に戻り、家業である機織り会社を手伝う 
22歳 1974年 結婚し、専業主婦に専念 
43歳 1995年 離婚 
48歳 2000年 1年間の準備期間を経て、カフェ「salut(さりゅ)」を開業 
54歳 2006年 スイーツの卸販売などを行うために、株式会社さりゅとして法人化 
55歳 2007年 スイーツを引き出物などのギフトとして提供するブライダル事業をスタート 

起業ストーリー

緑豊かな場所で、季節の素材とくつろぎの時間を提供

日本海の豊富な海の幸に、日本屈指の生産高を誇るお米、そして甘味の高い野菜やフルーツ。高木美代子さんが経営するカフェ「salut(さりゅ)」は、そんな自然の恵豊かな福井県内で、季節の素材を使った料理を提供しています。当初は都会型のカフェを構想していた高木さんでしたが、実際に出店したのは、田んぼの真ん中。山や緑に囲まれた中に位置しています。「すぐ近くによく通っていた図書館があって、時間の流れがゆるやかで、もともと大好きな場所でした。こんなところでお店ができたらいいなと考えていたのですが、まさか本当にかなうとは。縁が巡ってきたおかげだと思います」。

高木さんは21年間、専業主婦を経験してきた人物。事業を経営していた夫との離婚を機に、起業を考え始めます。「当時、ふたりの娘も高校生と大学生でしたので、仕送りや学費も必要。再就職も考えましたが、長く専業主婦をしてきた私が採用されるのは難しいはずだと。それに、実家も長く商売をしてきましたから、自然と起業を考えるようになりました」。ただ、仕事のキャリアが21年前に途絶えているだけに、前職で習得した技術やノウハウを生かすことはなかなかに難しいといえます。しかし、高木さんはそこであきらめません。主婦として培った料理の技術や、好きが高じて収集していた器を事業に生かそうと考えます。「夫のもとには訪れるゲストが多く、そのおもてなしのために料理の腕を磨いてきました。それで培った技術を生かしたメニューと、たくさん集めてきた器で、今度は私のお店にくるお客さまをもてなしたい、そう思ったんです」。

起業セミナーで学んだ知識を生かして、金融機関との融資交渉に

そこで、女性などの起業を応援する機関「WWB/ジャパン」開催の起業セミナーに参加。起業の心得から基礎知識、事業計画書の作成法などを習得。その一方で、物件探しも始めていきます。「想定した予算内で、一度妥協して物件を見つけたのですが、実のところはあまり気に入っていませんでした。設計士の方に『やはり妥協するのは、やめませんか』と言われて一旦白紙に。再度、物件探しを始めました」。そんな中で、身内から「いい土地がある」と紹介されたのが、前出の高木さんお気に入りの場所だったのです。テナント物件を賃借するのではなく、土地を購入して建物を建てるところから始めなくてはいけないため、多額の初期投資が必要になります。しかし、これを何かの縁だと感じた高木さんは土地購入を決断。資金調達のために、金融機関の門をたたきました。「セミナーで学んだ事業計画書を提示して、お店にかける情熱を語りました。それまでの実績のない私に担当者は難色を示しましたが、支店長が非常に私を買ってくれました」。高木さんは自己資金をつくるために、離婚で分与されたマンションを売却し、身の回り宝飾品などを質屋に入れることで、3500万円をつくりました。その努力や事業に懸ける情熱が実り、後の追加融資で4000万円の調達に成功し、合計7500万円を準備することができました。

また、高木さんは自宅でつくる料理と、お金を対価としてもらってつくる料理とは違うと考え、以前からよく行っていた懐石料理店の料理人に修業させてもらうことにしました。「3日間でいいですから、と頼み込み、開業するカフェの厨房を使って調理を集中的に学ばせていただきました」。そして2000年4月、念願の場所にカフェを開業。「店舗の設備や造作に資金を使ったため、宣伝などは一切行いませんでした。ですから、最初に来てくれたのは近隣の方やその口コミで訪れてくれた方々。でも、宣伝しなかったことは正解だったと後々で思いました」。というのも、いくら修業して調理を学んだとはいえ、カフェの経営は初めてだったことが理由です。宣伝によってオープン景気で集客できたとしても、慣れないもてなしでお客さまに不手際をしてしまったら、一気に評判を落してしまいます。それでも、不手際は多かったと言いますが、オープン景気によるダメージを最小限にして、高木さんは少しずつファンを獲得していきました。お客さまが楽しみにしてやって来るのは、1日60食限定のランチ。野菜、肉、魚のバランスを考えた季節の素材を生かしたメニューです。素材を厳選し、志向を凝らし、真摯につくるランチは大好評。当初は返済に追われて不安で、なかなか寝つけなかったという高木さんですが、経営は順調に進んでいきました。また、開業から1年後にはスイーツ類にも力を注ぐようになりました。「それまでスイーツは外注していたのですが、当店で出すものですから、当店らしいものにしていきたいと考えたんです。素材を厳選して、季節に合ったものを出していきたいと、パティシエをしていた人を採用し、自社開発をしました」。

こだわりのチーズケーキを、ブライダルギフトとして提供

自社開発したスイーツもランチと並んで名物になっていった頃、地元の企業からカフェで評判だったチーズケーキのインターネット販売を始めないかと誘いがかかり、販売を開始します。ところが……。「カフェではとっても売れる商品だったのですが、ネットではまるで売れないのです。ショックでした。ある交流会に参加して試食会を開催したところ、金額設定やインパクトの薄さなどを指摘され、対面販売と顔の見えないネット販売の違いを痛感しました」。そこで、高木さんは厚生労働省の「女性起業家向けメンター紹介サービス事業」を活用し、先輩起業家などからの数々のアドバイスをもらい、商品開発を進めていきます。様々な市販のチーズケーキを試食して分析。そこから生まれたのが、一口サイズのチーズケーキ「cororu(コロル)」でした。10種類のチーズケーキがワンセットになっている商品で、プレーンやいちご、チョコレートなどの定番の味から、ペッパーやドライフルーツの洋酒漬けといった大人向きの味、抹茶や栗など日本らしい味が楽しめます。「ギフトとして使ってほしかったので、パッケージにもこだわりました。真っ白くて細長いケースを開けると、カラフルなチーズケーキが目に飛び込んでくる感じです」。まるで、上品な絵の具のケースのようです。自社でネット販売もスタートし、女性誌などでも取り上げられるようになっていきました。

また、そのセンスの高さから地元ホテルなどのブライダルの引き出物として注文が入るなど、注目がどんどん高まっています。「かつて私の情熱を買って融資を決断してくれた金融機関の支店長さんは、異動されてブライダル事業をされているのですが、そこでも私の『cororu』をとってもひいきにしてくれているんです。ご縁を大切にしなくてはと実感しますね」。高木さんはカフェの経営と並んで、ブライダル向けのスイーツ卸販売にも力を注ぎたいと、2006年8月に株式会社さりゅとして法人化。ブランド確立に努めています。「おかげさまで、がんばり屋のスタッフが10人に増え、ふたりの娘も私の事業をサポートしてくれています。センスのいい長女、しっかり屋の次女は、私の事業においてもなくてはならない存在。やっとさりゅは自慢のできる素晴らしいチームに育ってきました」。大好きな場所で、大好きな仲間に囲まれ、大好きな仕事を楽しむ高木さん。仕事キャリアがいくら浅くても「好き」と「得意」を生かせば、充実した自分らしい起業スタイルが築けることを高木さんは証明しています。

会社概要

会社(団体)名 株式会社さりゅ
URL http://salutsalut.net/
創業 2001年4月11日
設立 2006年8月1日
業務内容 カフェ経営・スイーツの卸販売

(高木 美代子さんの場合)

起業のきっかけ、動機

大きなきっかけは離婚です。再就職も考えましたが、専業主婦歴が長かったので、慣れない仕事に就くのも厳しいと思いました。ただ、当時、ふたりの娘は高校と大学に通っていたので、その仕送りや学費などを捻出する必要もありました。もともと商売をしていた環境で育ったこともあり、自然と自分で事業する方向を向くようになりました。それでは、起業して何が自分にできるのだろうかと考え、料理が得意だったことや器が好きで集めていたことを生かしたカフェがいいのではないかと思い、決断しました。

起業までに準備したこと

まず、「WWB/ジャパン」という女性などの起業を応援する機関が開催したセミナーに参加して、起業に関するイロハを学びました。その一方で物件探しをスタート。なかなか理想とする物件に出合えず苦労しました。一度妥協して決めかけたテナント物件もあったのですが、設計士に相談して再検討。そしてようやく理想の土地を見つけて購入し、店舗付き住宅にしたのです。購入したことによって初期投資もかさみ、資金調達にもずいぶん苦労しましたが、妥協せず、自分らしい店をつくることにこだわり続けたことで、自分の理想とする店をつくりあげることができました。

起業時に一番苦労したこと

何といっても、資金調達です。離婚で分与されたマンションを売ったり、身の回りのものを質屋に入れたりして自己資金をつくり、金融機関から融資を得ましたが、金融機関に資金の相談をすることも初めてのこと。交渉には時間もかかりましたし、厨房機器の購入や駐車場スペースの整備などで追加融資を依頼したりと、資金の工面は本当に大変でした。

だからうまく起業できた!…その一番の理由

自分が得意なこと、好きなことを生かした事業をしようと、考えたことが大きいです。まったく経験のない未知の事業でしたら、大きな借金をしても返済に自信がなかったでしょうし、ましてや売り上げを上げることも難しかったはずです。また、自分らしい店にしようと、妥協しなかったことも大きいと思います。

起業時の環境(友人や家族の協力他)

現在も私を支えてくれる、娘ふたりが協力してくれました。不動産関連の仕事をしていた友人や身内などにも物件探しなどで協力してもらいました。また、事業実績のない私を信用して、身の丈以上の融資を決断してくれた金融機関の支店長さんなど多くの方に協力してもらい、本当に感謝しています。

最初のお客さんと営業方法

まったく広告費をかけなかったので、店舗近隣の方やその方々の口コミで来てくれたのが、最初のお客さまです。その後も特に広告・宣伝をしていないのですが、地域誌などに記事として取り上げてもらい、またそれをみた方が来てくれたりと、口コミで広がっていきました。

起業の際の重要ポイント

カフェといっても、ただ軽食を提供するだけでなく、個性を出すことが重要だと思います。「salut(さりゅ)」では季節の素材を生かした、野菜や肉、魚のバランスのいいランチや自家製スーツが自慢。もともと器が好きで、収集していたので、それらを使った自分らしい演出を心がけています。

役に立った情報源や相談先

地元商工会議所で開催された、女性などの起業を応援する機関「WWB/ジャパン」が主催の起業セミナーに参加しました。スイーツの開発をする際には、厚生労働省の「女性起業家向けメンター紹介サービス事業」を活用して、先輩起業家などからアドバイスをもらいながら、商品開発を進めていきました。

開業資金

7500万円です。離婚で分与されたマンションを売ったり、身の回りの装飾品などを質屋に入れて、3500万円をつくり、残りの4000万円は銀行から融資を受けました。土地を購入して始めたことや厨房機器などの充実、駐車場の整備などでどうしても初期投資がかさんでしまいました。

活動拠点(事務所・店など)

福井市内にある店舗「salut(さりゅ)」です。田んぼの真ん中にある緑の多い場所で、住居兼店舗にしています。

起業時の管理体制の整備(税理士、弁護士、弁理士など)

知り合いの税理士に相談したほか、受講した起業セミナーで知り合った仲間に社会保険労務士がいたため、スタッフの採用の際に相談しています。

起業後の転機

カフェを開業して1年後、自社でスイーツを開発して販売を始めたことです。それまでは外注していたのですが、それでは自分らしい個性を出すことや、季節に合わせた商品を出せないと考え、自社開発を始めました。そこから様々なアイデアが生まれていき、ロールケーキやチーズケーキの卸販売などにつながっていったのだと思います。

起業して自分が成長したと感じたこと

スタッフとのコミュニーケション力が上がり、しっかりとした素晴らしいチームになってきました。スタッフとの連携プレイが我ながら上手くなったと感じます。ここまでくるには時間がかかりましたが、がんばり屋のいい人材に恵まれたからこそ、チームワークがつくれたのだと思います。

起業を志す人への一言アドバイス

起業するのはそう難しいことではありません。事業を継続させるのが難しいと思います。長く愛される事業になるには、やっぱり基礎知識をしっかり身につけておくことだと思います。料理も基本が大事ですが、事業も同じ。基本の習得が大事です。起業セミナーなど最近は多いですから、そういったところで学ぶことも大切ではないでしょうか。

気分転換のしかた

のんびり読書をしたり、裏山をぼーっと見たり。そんなゆっくりした時間が最近の気分転換です。以前は食べ歩きが気分転換といいつつも勉強になっていましたが、近頃の食べ歩きは週に1回ほど。スタッフと一緒に楽しんでいます。

その他伝えたいことなど

事業継続には、お客さまのニーズをいち早くキャッチすることと、地道に続ける努力。このふたつがとても重要だと思います。いくらお客さまのニーズをキャッチしても、それに応えられる力がなくては意味がありません。だから、ニーズにすぐ応えられる力を付けておくためにも、日々の地道な努力が大切です。起業するにも勉強は大切ですが、その後も常に勉強をしていくことが重要だと思います。


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